V-ROD最大の特徴であるレボリューションエンジンはそれまで頑なに空冷OHVエンジンを作ってきたハーレーダビッドソンが何を血迷ったかとうとう出してしまった量産モデル初の水冷DOHCエンジンである。
「やっと許しが出たか!」「水冷の封印がとけられた!」
水冷化され角度もそれまでの45度ではなく60度に変更。ボアストロークも100×72(mm)とショートストロークとなり高回転が可能となった。
しかも水冷なのに放熱フィンを付けているというオシャレパワー。
エンジンの性能が飛躍的に上昇したのは良いことではあるが、同時に「伝統からの脱線」とも取れる水冷エンジンの採用はV-RODにとって棘の道であった。多分これが原因でV-RODは発売以来不人気街道を爆進することになる。
このエンジンの開発はそれまでひたすら空冷OHVで突っ走ってきた同社としてはかなりの難題であった。
VR1000でレース用水冷エンジンの開発はしたものの、市販車用の水冷エンジンの開発経験はほとんどなく、結果的に「こんな技術で開発できるわけがない・・」と諦め表情になる。
そこでブルジョワ大好きポルシェに「手伝ってください;;」と格の違いを見せつけられ自分の地位を悟ったのかいつのまにやら丁寧語で協力を仰ぐこととなった。
ただしエンジン本体はあくまでハーレーダビッドソン自社で開発し、ポルシェからは水冷エンジンの技術を学んだのであってポルシェに作ってもらったわけではない事を述べておく。
このためV-RODのエンジン音を聞いて「これは確かにポルシェの感じだ」などと分かる人がいるらしいが、多分ハッタリだろう。
技術なら日本を頼ればいいのにと思うが、日本車には昔痛い目にあったのと、日本だけには頼りたくないという信念でもあるのだろうか、というか知らん。
従来のファミリーが大排気量&ロングストロークの生み出す低回転「もりもりトルク」でゆったり流すのに対し、V-RODは高回転でかっ飛ばすスーパースポーツのそれである。
REDゾーンは9000回転から。従来のファミリーが5500回転ほどと考えるとこれは凄い。ただこのエンジンのため、ハーレーでお馴染みのドコドコした重低音が好きな方は残念ながらV-RODは選択から外れることになる。
雑誌などでは「ハーレーらしい鼓動感は残っている」といった表現をしている場合があるが、それは大人の事情でそう書いてるだけ。
無理やり擬音で表現すると既存の空冷OHVが「ドッドッドッドドドドド!!」であるのに対してV-RODのそれは「キュンキュンキュンキュイィィィィィン!!」であり完全に別物である。
とにかくこの二つのエンジン音が同じに聞こえるなら耳鼻科に行った方が良い。これらの理由によりレボリューションエンジンはHDとしては「革命」であることに間違いないが、世界的に見れば「今更!?」である。
VRSC以外のハーレーダビッドソンが製造するエンジンの一部を軽く紹介する。
注目すべきは走りに重点を置いたビューエルのエンジンも空冷OHV45度V-TWINということ。水冷のVRSCファミリーが如何に異色な存在かが良く分かる。
スポーツスターファミリーに採用されている。レボリューションと語呂が似ているので間違えそうになる。
写真は2011年モデルのXL883N「アイアン883」だ。排気量は文字通り883cc。
伝統の空冷OHV45度V-TWINの最新型。ハーレーといったらやっぱりこの系譜。
その排気量はとうとう1689ccに達した。2011年モデルの一部のツーリングファミリーに採用されている。
ハーレーダビッドソンの走り担当であるビューエルが採用するエンジン。名前がカッコイイ。
残念ながらビューエル自体は2010年モデルで生産を終了してしまった。全部リーマンショックのせいだ。
同じ排気量でもVRSCRストリートロッドだけ5ps強い。
なお、2008年モデルから採用された1250ccエンジンの詳しい馬力(出力)に関してはV-ROD最強伝説にてレポートしてます。
項目 | 初期型 | ストリートロッド | 2008年 |
エンジン形式 | V型2気筒 | V型2気筒 | V型2気筒 |
ヘッド | DOHC | DOHC | DOHC |
冷却方式 | 水冷式 | 水冷式 | 水冷式 |
燃料供給装置形式 | インジェクション | インジェクション | インジェクション |
総排気量(cc) | 1131 | 1131 | 1246 |
内径×行程(mm) | 100×72 | 100×72 | 105×72 |
圧縮比 | 11.3:1 | 11.3:1 | 11.5:1 |
最高出力(ps/rpm) | 115/8500 | 120/8500 | 120/8500 |
最大トルク(kg・m/rpm) | 10.2/6500 | 10.2/6500 | 10.4/7000 |
※上記仕様諸元「デアゴスティーニ週刊ハーレーダビッドソン第2号、34号、40号」より抜粋。